久住昌之さんの連載 第2回「飲み過ぎはからだに毒」

「孤独のグルメ」原作者 久住昌之さんの連載
「孤独のグルメ」の原作者としてお馴染みの、漫画家・ミュージシャンの「久住昌之」さんに連載をお願いしたところ、快くOKしていただきました。毎月、美容と健康について久住さんの視点で連載していただきます。どんな話題が登場するか、お楽しみに。
第2回「飲み過ぎはからだに毒」
朝起きる。全身に酒が残ってる。まだ酔ってるかもしれない。ボーッと気分悪い。
トイレに行く。小便をする。
頭が重い。脳がしびれている。というか、頭皮がジーンとしているような感じ。顔も腫れてるような気がする。胃も重い。
飲み屋から出たあと、どっかで何か食べたような気がする。最後の方、覚えてない。というか、今は考えたくもない。
流しに行って、コップで水道水を受けゴクゴク飲む。冷蔵庫に冷えたミネラルウォーターがあるのを知ってるけど、それすらめんどうくさい。通りにくい喉を抜けて、水が食道を落ちていくのがわかる。
ベッドに戻る。ドターッとずるーっと倒れるように横臥する。目をつぶる。耳の奥ででキーンというような音がしている。これはは一体なんの音だ。
すぐ寝返りを打って、うつぶせになる。
「あー」
と、目をつぶったまま低い声を出す。
また仰向けになる。あくびが出る。涙も出る。頭がぐるぐる回っている。
「ダメだ」
と声に出して言う。「気持ち悪い」。ついに言葉にしてしまった。もうダメだ。ドス黒い世界に落ちていく。気持ち悪さがいよいよ勢力を増し、俺の体の中でむくむくと黒雲のように広がっていく。
吐き気はない。でも、むしろ吐きたい。でも起きてトイレに行くのも辛い。
なんども寝返りを打ち、寝るしかない、と思う。が、眠れない。むかつく。
そのまま30分か40分が過ぎて、いつの間にか寝ていた。一瞬かもしれない。もう一度起きて、水を飲んでから、またトイレに行く。小なのに、座ってして、し終わっても立てない。息がまだきっと酒臭い。
まだ酔ってるような感じは消えてきているが、気持ち悪さはもはや全身を支配している。体温が低いような気がして、寒気もあり、布団にもぐる。飲み過ぎた。
ビールを飲んで、ワインを飲んだ。それから別の店に行って、またビールから初めて・・・。そうか、そこで偶然知り合いにあって、話が弾んで(といっても何話したか全然覚えてないが)日本酒を飲んだ。冷やで。馬鹿だ。日本酒とワイン「混ぜるな危険」って知ってるのに。
どのくらい飲んだんだろう。笑って、話が盛り上がって、どんどん飲んじゃったんだろうな。定量をとっくにこえて。
11時過ぎにしかたなく起きる。シャワーを浴びるしかない。裸になって風呂に入る。シャワーを浴びながら、昨日の湯を沸かす。で、まだ全然ぬるいけど、入る。
「あー」という。あくびが出て、涙が出る。
けっこう長湯して、出る。下着を着替えると、少しまともになってきた気がする。
でも、だるい。Tシャツとパンツでベッドの上にドタッと倒れる。
全身に毒が回っている状態…
あ、そうだ。帰りに、遠回りしてラーメン食べに行った。気がふれている。それも豚骨。酔った目をして食ってたんだろうな。ああ、いやだいやだ。あまり食わないで酒ばかり飲んでたんだ。そのせいか、なんだろう、あの深夜突然の暴力的空腹は。
仕事場に向かう。太陽が眩しい。喉が乾く。自販機で水を買う。
しかし、仕事場に着くと、じわじわと腰を据えた「二日酔い」が襲ってくる。仕事場のソファに寝転がる。風邪にも似ている。頭の芯が痛い。胸焼けがする。1時間ぐらいそのまま目を閉じてじっとしている。ウトウトもする。トイレに行きたくなったのをきっかけに「これじゃダメだ!」といきなり起きて、カレーうどんを食べに出る。
カレーうどん、ふた口啜ったあたりで、またどうしようもない気持ち悪さが襲ってくる。水を飲んで息をつき、ちょっと休む。そしてカレーうどんに再び立ち向かう。これぐらいしか今食べられるものはない。これを食べさえすれば治る。信念と経験でそう思う。突如、汗が噴き出してくる。
何も考えないで、がんばって食べる。
汗が滴る。鼻水も出る。鼻をかむ。ぐしゃぐしゃ。もう何が何だかわからない感じ。
仕事場に戻る。カレーうどんによって目覚めた二日酔いが、最後の抵抗を試みて、体内で暴れ出す。治りかけたのが、戻ってきた感じ。もう眠る。それしかない。でも眠れない。
と思ったらちょっと寝ていた。起きたらかなりよくなっている。かもしれない。無理やり机に向かう。ボケーっとしている。
当然仕事にならない。ネットを見たり、ちょっと書き込みしてみたり。
そのうちに大用がしたくなり、トイレに行って、する。これが仕上げのような気がする。かなり真人間に近ずいてきた。外はもう夕方になり始めている。
これがからだにいいわけがない。もろ、酒がドクになっている。酒は毒。これは間違いないと思っていい。
肉体的疲れや、ストレスや、気分転換に酒がうまいのは「毒を持って毒を制しているのだ」と思った方がいい。
百薬の長であり、用い方を間違えば、体を蝕むだけの猛毒だ。内臓にも悪いが、お肌にも間違いなく悪い。美容にもよろしくないですね。
ボクはもはや先に書いたような二日酔いはしない。しないというか、できなくなった。そこまで飲めない。そこまで飲む前に疲れてしまう。眠くなる。もう飲めない、とからだが脳にいう。で、帰る。歳だ。でも、よくできてるなと思う。ちょうどいい。
だけど、さっき書いたような二日酔い、「もう絶対しない!」と何度も誓ったのに、しばらくするとやってしまったのも事実。
今度なった時は、起きたらこの世にいないかもしれない。それは、ひとにもめいわくをかけるから、こんどからぼくはほんとうに気をつけようとぼくは思います(小学校の反省文の最後)。
反省したら、次の飲み会の前にはこれを・・・
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